ラズベリーパイの5つの種類、失敗しない選び方、おすすめ入門機
教育用の手のひらサイズコンピューターとしてスタートし、現在圧倒的な人気を誇るラズベリーパイ(Raspberry Pi)ですが、種類が多くてよくわからないという声もよく聞きます。この記事ではラズベリーパイの種類と、ラズパイ活用のメリット、ラズパイの種類の選び方、ラズパイスクールおすすめの入門機を説明しています。種類はたくさんあるので、ぜひ参考にされてください。
ラズベリーパイとは
Raspberry Pi (ラズベリーパイ) は、プリント基板の上にCPUやメモリがあり、HDMIやUSBコネクターなどもついた手のひらサイズのコンピューターです。
厳密にはラズベリーパイはシングルボードコンピューター (SBC) と呼ばれ、1枚の基板上に、ARMベースのCPUを始めとした、コンピューターとして動く部品をすべて備えたものとなっています。
重さは50gほどですが様々な入出力ポートがあるため、いろいろな周辺機器をつなぐことができます。モニター、マウス、キーボードをつなぐと、WindowsやMac と同じようにデスクトップPCとして使えます。また、ネットワークの機能を活かすと、IoTのさまざまなプロジェクトに活用でき、個人用、業務用など、活用の幅はとても広いです。
と、以上のような説明をよく見かけるラズベリーパイですが、これは次に説明する5つの種類のうち、もっともポピュラーなRaspberry Piシリーズの説明になります。
次から、このメインシリーズを筆頭とし、その他のラズベリーパイの種類もみていきましょう。
ラズベリーパイの種類
ラズベリーパイには大きく分けて5つの種類があります。
- Raspberry Pi シリーズ
- Raspberry Pi 400
- Raspberry Pi Zero シリーズ
- Raspberry Pi Picoシリーズ
- Raspberry Pi Compute Moduleシリーズ
種類1: Raspberry Pi シリーズ
迷ったらこれを選べば問題なし、という1番有名かつスタンダードなのがこちらのRaspberry Piシリーズです。手のひらに乗る少し大きめの名刺サイズのシリーズです。Raspberry Pi 5などと数字がついているのでわかりやすく、iPhoneのように、最後についている数字が大きくなるほど新しく高性能です。
microSDに入れたOSを起動し、デスクトップPCのようにも使用できます。価格帯は8,000〜15,000円です。
このシリーズには、同じ1や3のバージョンでも少し機能の違うリビジョンと呼ばれる派生形があり、1 Model Bや 3 Model A+などとついています。iPhoneでいうと6と6sのような感じです。
バージョン+リビジョン | バージョンで共通する機能 |
---|---|
1 Model B/A/B+/A+ | シングルコア、無線機能なし |
2 Model B | クアッドコア、無線機能なし |
3 Model B/A+/B+ | クアッドコア、WiFi、Bluetooth |
4 Model B | クアッドコア、WiFi、Bluetooth、4Kデュアルモニタ、USB-C電源供給 |
5 Model B | クアッドコア、WiFi、Bluetooth、4Kデュアルモニタ、USB-C電源供給 |
リビジョンは実際はあまり気にしなくてOkです。というのは、現在購入できるのはほぼRaspberry Pi 4と5で、そのリビジョンはModel Bの一択しかないからです。
ただしそのラズパイ4や5は、メモリが2GB、4GB、8GBの3種類があります。メモリの選び方はメモリの選び方をごらんください。
2023年9月に発表され、日本では2024年2月に販売が開始された最新のラズパイ5の主要スペックは以下のようになっています。Raspberry Piシリーズのうち、ラズパイ5は最もハイスペックで、機能が充実しているモデルですので、デスクトップPCとして使いつつ、電子工作やプログラミングに取り組みたい場合は、特におすすめのモデルです。
SoC | Broadcom BCM2712 |
CPU | クアッドコア2.4 GHz Arm Cortex-A76 (64ビット) |
GPU | 800 MHz VideoCore VII OpenGL ES 3.1、Vulkan 1.2 HEVC(4Kp60デコード) |
メモリ | 2/4/8GB |
ネットワーク | Wi-Fi: 802.11b/g/n/ac, Bluetooth: 5.0、BLE, Gigabit Ethernet |
種類2: Raspberry Pi 400
キーボード一体型のラズベリーパイです。スペックはRaspberry Pi 4 Model B のメモリ4GBモデルとほぼ同じです。マウスと外部ディスプレイをつなぐとすぐデスクトップPCとして使えるというメリットがありますが、ラズベリーパイ専用のカメラが使えないのが注意点です。microSDに入れたOSを起動して使用するのは同じです。
価格は約14,000円です。すぐ飽きてしまうかもしれない子供向けに、安価にプログラミング用PCとしてデスクトップパソコンを用意したい場合、最有力の候補となるモデルです。
Raspberry Pi 400の詳細はRaspberry Pi 400(キーボード一体型ラズパイ)とはをごらんください。
種類3: Raspberry Pi Zero シリーズ
フリスクのケースサイズの小型のラズベリーパイです。性能は最新のラズベリーパイZero 2 Wでも、ラズベリーパイ4 Model Bの3分の1程度です。上記の2つシリーズと同じく、microSDに入れたOSを起動して使用します。
外部ディスプレイやマウス・キーボードもつなげますが、デスクトップPCとして使用するのはスペック的にかなり厳しく、デスクトップ環境なしのCUIのみで使用を想定したシリーズです。
価格帯は1,700〜2,700円です。Linux OSを搭載できつつも、小型で低消費電力であることから、求められる処理性能がそこまで高くない組み込み向けのプロジェクトに適しています。ココだけの話ですが、とある猫のIoTトイレ製品にこのZeroシリーズが使われています。
バージョン | 機能 |
Zero | シングルコア、無線機能なし |
Zero W | シングルコア、WiFi、Bluethooth |
Zero WH | シングルコア、WiFi、Bluethooth、ヘッダ付き |
Zero 2W | クアッドコア、WiFi、Bluethooth |
WHとWは紛らわしいですが、ヘッダーピンがはんだ付けされてるか、いないか、だけの違いです。Wを買って自分でヘッダーピンをはんだ付けづけすればWHになりますが、はんだ付けが苦手な人はWHを最初から買うと楽、という感じです。
2Wは最近出た最新モデルです。ヘッダーピンはついていませんので、自分ではんだ付けする必要があります。
Zero 2Wの主要スペックは以下のようになっています。
SoC | Broadcom BCM2710A1 |
CPU | クアッドコア ARM Cortex-A53 64ビット@ 1GHz |
GPU | VideoCore 4 |
メモリ | 512MB |
無線 | WiFi: 2.4GHz 802.11 b/g/n, Bluetooth: 4.2, BLE |
Raspberry Pi Zero 2 Wの詳細はRaspberry Pi Zero 2 Wとは?をごらんください。
種類4: Raspberry Pi Picoシリーズ
Picoシリーズはラズパイの種類のなかで一番小さいシリーズです。実はPicoシリーズは、マイクロコントローラー(マイコン)と呼ばれるコンピューターで、Raspberry Piシリーズ・400・Zeroシリーズとは全く違います。microSDカードスロットがなく、OSを入れて動かすことができません。カメラや外部ディスプレイなどもつなげません。
その代わり、MacやWindowsのPCからさっとプログラムを書き込み、簡単な電子工作やプログラミング学習をすぐに始められます。
価格帯は700〜1,200円です。安価ながらWiFiとBluetoothを搭載したPico Wというモデルもありますので、個人向けのIoTプロジェクトのみならず、業務用のIoTセンサーユニットをコストを抑えて制作する、のような用途にも使えます。
バージョン | 機能 |
Pico | 264KB RAM、2MB フラッシュ |
Pico H | 264KB RAM、2MB フラッシュ、ヘッダー付き |
Pico W | 264KB RAM、2MB フラッシュ、WiFi |
ラズパイPicoの主要スペックは以下のようになっています。
マイクロコントローラー | RP2040 |
プロセッサー | デュアルコアArm Cortex-M0+ |
Raspberry Pi Picoシリーズの詳細はRaspberry Pi Picoとはおよび、Raspberry Pi (ラズベリーパイ)Pico Wとはをごらんください。
種類5: Raspberry Pi Compute Module
こちらは組み込み用途向けに開発されたラズベリーパイで、大きな特徴としてeMMCを搭載しており、microSDが不要なことが挙げられます。普段はあまりお目にかかりませんが、デジタルサイネージなどの内部で使用されています。
実際に使用するには、Computeモジュールを取り付けるI/Oボードと呼ばれるベース基板が必要で、このI/Oボードと組み合わせることでUSBやEthernetなどが使用可能になります。
Compute ModuleシリーズはeMMCやメモリサイズの違いによって多くの種類があるため、まさに業務用のモデルといえるでしょう。
ラズパイ活用のメリット
もともとは子供の教育用コンピューターとしてスタートしたラズベリーパイですが、以下のメリットがあり、これまで説明した5つの種類が使い分けられ、子供の教育用を大きく超え、個人の趣味用から産業用まで、幅広く使用されています。
安価である
まず、フルスペックのラズベリーパイ5を例に上げてみましょう。
「価格は1万円ちょっと。WiFiとBluetoothはあるし、Ethernetも使えるからネットワーク性能は文句はつけようがない。そして普通に使う分には壊れない。microSDの故障が心配ならmicroSDを読み込み専用にする等できる。そうすれば産業用PCの代わりとしても使える。」
という具合ですね。では
「同じようなスペックの産業用PCの価格は?」
といえば、10倍ほど高いわけです。それならラズパイを使えばいいんじゃない?となるわけです。
Linux OSで動く
ラズベリーパイは素直な使い方として、Raspberry Pi OSというLinux OSを搭載して使います。Linux OSは無料です。つまり、安価であることにもつながります。これがWindowsだったらお金を払ってWindow OSを買わないといけないですし、MacだったらそもそもハードウェアがMacでないといけません。
Linux OSが使えるメリットは、これだけではありません。Linux OSは比較的低スペックなマシンでも安定して動き、設定をきちんと行えば堅牢なセキュリティを確保できます。
個人用はともかく、産業用となるとセキュリティは大きな考慮ポイントとなるでしょう。
消費電力が小さい
ラズベリーパイはRaspberry Piシリーズでしたら15W程度のACアダプタで、ZeroシリーズやPicoシリーズでしたらバッテリーで駆動することができるほど低消費電力です。
これまで大きく電力を消費していた機器をRaspberry Piシリーズで置き換えると、消費電力を大幅に削減できますし、IoTセンサーなどのデバイスをPicoシリーズを使って制作する、といったこともできますね。
開発者コミュニティがある
ラズベリーパイは世界中に開発者コミュニティがあり、様々なプロジェクトの情報が豊富にあります。
例えば、Raspberry Piにつなぐ温湿度センサーはこれがいいとか、ライブラリはこれがいいとか、知恵やノウハウがインターネット上のあちこちで見つけることができます。
これらの情報を活かすと、何も知らない素人に高い開発費用をふっかけてくるようなベンダーに開発を依頼することなく、自分自身で情報を集め、勉強し、プロジェクトを進めることが可能になります。
そもそも、ラズベリーパイは教育用のコンピューターでした。それを大人が勝手な理由で産業用に使い出したわけで、そういう逸れた使い方をしたい大人向けに、別の大人が高い相談費用や開発費用を請求するビジネスを始めるというのは、本来のラズベリーパイの趣旨から大きく逸脱すると言えるのではないでしょうか。
ですので、インターネット上の情報を活かし、自分で問題を解決していけ、さらに、コミュニティーを通して世の中にノウハウを還元していく、というのがラズベリーパイの最大のメリットと言えます。
ラズパイの種類の選び方
ラズベリーパイの種類が5つあることを知った上で、用途別にどのシリーズが適しているのかみていきましょう。
ラズパイの種類の選び方: じっくり電子工作・プログラミング学習をしたい
この用途ですと、最初にモニター・キーボード・マウスをつなぎ、OSのセットアップをしてPCとして使用もしつつ、40本あるGPIOを活用する使用となるため、Raspberry Pi 4か5がおすすめです。
メモリは2、4、8GBとありますが、4GBモデルを選んでおけば問題ありません。
ちなみに、Raspberry Pi 5はリリースされたばかりで情報が少ないのと、GPIOまわりのプログラミングが少し複雑になっているので、全くの初心者の方はRaspberry Pi 4を選ぶといいでしょう。
ラズパイの種類の選び方: モニターなしで安くラズパイを始めてみたい
この用途ですと、外部ディスプレイなしでラズパイをネットワーク越しにリモート制御できるSSHという方法を使ってプログラムを作成したり実行しつつ、40本あるGPIOを活用しながらの使用となるため、Raspberry Pi Zero W か 2Wがおすすめです。
無印のZeroは無線の機能がないのと現在は販売されていませんし、今はZero 2 Wが販売されていますので、Zero 2 Wが第一候補になるかと思います。
ラズパイの種類の選び方: 手っ取り早く電子工作・プログラミングを始めたい
OSとかLinuxはよくわからないけど、電子工作をとにかく始めてみたい。そんな場合はRaspberry Pi Pico Hがおすすめです。ピンヘッダーがすでにはんだ付けされていますので、電子回路をサクッと組み立て、Pythonによく似たMicroPythonというプログラミング言語を使い、普段お使いのPCからプログラミングしてすぐ動かすことができます。
「子供にちょっとラズパイをやらせてみたいんだけど、飽きちゃったら困っちゃうな」という用途にもぴったりかと思います。というのはPico Hは800円程度で購入できるからです。
WiFiを使った電子工作に取り組みたい場合は、Raspberry Pi Pico Wがおすすめです。こちらは1,200円程度です。
ラズパイの種類の選び方: 産業用に使ってみたい
いくつかのモデルを試して、評価してからになるかと思います。産業用専用のCompute Moduleでなくても、Raspberry PiシリーズやZeroシリーズ、またはPicoシリーズが最適だったいうケースもありえます。Compute Moduleは前述の通りI/Oボードがないと何もできませんので、まずはRapsberry Pi 4か5を検証するのが良いと思います。そのうえで、機器の低消費電力化、小型化の検討に合わせZeroシリーズやPicoシリーズを検討するのがよいでしょう。
ラズパイスクールおすすめの入門機
最後になりますが、ラズパイスクールとしてのおすすめのラズパイの種類は2つあります。
1つ目はなんと言っても安定のRaspberry Pi 4の4GBです。様々な用途に使用できる万能プレイヤーなので、1台持っていると安心感があります。
2つ目は800円以下で購入できるRaspberry Pi Pico Hです。microSDカードへのOSのインストール等は一切不要、Linuxの知識もいりません。お使いのMacかWindowsパソコンで、専用のエディターでMicroPythonプログラムをさっと書いて、ちゃちゃっと動かせます。これはかなり魅力的ではないでしょうか?
終わりに
もし用途にピッタリ合うラズパイがどうしても決まらないという場合は、無料で相談も受け付けています。ぜひラズパイスクールへお問い合わせください😊